
「未来会計が変える社内の風土」未経験から“伴走型支援”のプロへ―税理士法人しんかわ会計 坂田ゆか

目次
神奈川県川崎市の税理士法人しんかわ会計で未来会計を“専任”で担う坂田ゆかさん。「ミライスコープ®」を立ち上げ、経営者の想いに寄り添いながら、目標達成への伴走を続けています。未経験からの挑戦だからこそ生まれた柔軟な視点と、社長との信頼関係の築き方は、経営支援を志す人にとって多くのヒントが詰まった実践例です。
税理士法人しんかわ会計
税務申告業務部 経営支援課
坂田ゆか 大阪出身。 2022年に異業種から未経験で会計業界へ飛び込んだが、税務スタッフではなくMAS専任として日々奮闘中。 写真撮影(愛機D750)が趣味だが、育児で最近できていないのが悩み。 モットーは「すぐやる」「切り替えは早めに」 |
「バックオフィスから経営に参画したい」想いで営業職から会計業界へ
Q自己紹介をお願いします
神奈川県の川崎市にある税理士法人しんかわ会計の税務申告業務部の経営支援課に所属しています。大阪府出身で、2022年に異業種から未経験で会計業界に飛び込んできました。
税務担当ではなく、入社した時からMASを専任として業務にあたっています。未来会計に携わり始めて、今年で3年目になります。しんかわ会計に入社する前までは、事務職や営業職をしていました。一番キャリアとして長いのは営業職ですね。
趣味は写真撮影ですが、今は育児が忙しいためあまりできていません。モットーは「何事もすぐに行う」「気持ちの切り替えは早めにする」ことです。
Qご転職にあたって様々な選択肢があったと思うのですが、なぜ会計業界を選ばれたのですか?
バックオフィスから経営へ参画してみたいと考えたことがきっかけです。元々、大学では経営を学んでいたこともあり、会計や数字に抵抗はありませんでした。ですので、会計業界という選択に違和感はなかったですね。「営業では経験できない、バックオフィスから経営への参画に挑戦してみたい」と考えていた矢先に、会計業界未経験でもOKという募集を見かけチャレンジしてみようかなと思いました。
Q未来会計業務に携わることになった経緯を教えてください。
当初、私は未経験の税務スタッフという職種に応募していました。しかし、最初の面接で「募集要項に変更があった」と聞かされました。その瞬間は完全に「落ちた」と思いましたね。(笑)ただ、話をよく聞いてみると「今後は未来会計業務に力を入れていきたい。その人材を探したい」という内容でした。
その時はまだ未来会計というものを知りませんでしたが、面白そうだと感じました。未来会計は目で見えない価値をお客様へ伝えていくので、営業での経験も活かせると感じました。また、お客様の将来と向き合うため、正解のない仕事だと聞いて、さらに興味が湧きました。
これまでの営業経験も活かせそうという所から、この話をしてもらえたのだと思います。後日、二次面接に呼ばれて、代表からも未来会計の話を聞きました。その時に、代表から明確に「営業職で培った経験をミライスコープ®(しんかわ会計での商品名)でぜひ活かしてほしい」という声を直々にかけていただき、しんかわ会計に入社しました。
Q事務所としても未来会計は新しい挑戦だったのでしょうか
事務所としていつかは取り組む予定はありましたが、税務業務に追われており、未来会計を前に進められなかったと聞いています。そのため、今回私のような専任担当を入れることを機に、未来会計が大きく前進することになりました。
未来会計事業の立ち上げで得た経験
Q初めての会計事務所で、未来会計事業の立上げをすることになったのですね。始めたばかりの苦労などはありましたか?
最初、社長に未来会計を受け入れてもらうことに苦戦しました。従来の会計事務所業務は、決算書の作成や税務関連の計算などをするのが仕事です。その領域を超えて、未来の経営に向けてサポートするという話には、提案先の社長から疑念を持たれることも度々ありました。
よくコンサルとの違いを聞かれることが多く、説明をしても完全に納得してもらえませんでしたね。未来会計は、ティーチング型のコンサル業務とは異なり、社長が考えている将来や現状の課題を整理し、ありたい姿に近づけるためのコーチング型伴走支援です。社長へ伝える技術には磨きをかけながら、引き続き挑戦中です。
税務会計と未来会計の視点の置き方の違い
Qそうだったのですね。社長と将来の話をする中で、意識していることを教えていただけますか?
税務会計と未来会計で視点の置き方が違うことを意識しています。税務会計業務は、企業活動の中で発生したお金の流れを整理、計算するため、答えは現在から見て過去にあります。未来会計では、先に将来の目標を設定し、現在のお金の使い方や、動き方を決めていくことが大切になってきます。勿論、過去の会計データも必要になってきますが、こういった視点の置き方の違いを意識しています。
私自身、学びきったらそこで終了という感覚ではなく、成長するために学び続ける必要があると考えているため、必要な情報収集は欠かさず行うようにしています。MAP経営の研修会で学んだ未来会計の知識・ノウハウは実践の場でも活かされています。積極的に未来会計に取り組む他事務所の担当者の方々からお話を聞くと、俄然やる気が出て、その情熱をそのまま社長にもお伝えするようにしています。
Q情報を素直に受け取れていることが坂田さんの強みですね。
ありがとうございます。未経験だからこそ、情報を素直に受け入れる姿勢を持てているのだと思います。どの環境でも起こりうる話ですが、同じことに長く携わっていると、よほどの環境変化がない限り、自分なりの考え方ややり方が確立されて、新しいことにはすぐに順応できなくなることも少なくありません。
未経験な分苦労することもありますが、様々な情報を自分なりに消化し、理解できたものをお客様へ届けることが、良い循環を生み出すことに繋がると信じています。
Q未来会計の仕事は3年目とのことですが実践を重ねるにあたって、坂田さんの中で変化された部分はありますか?
まず、目的を考えて、その目的を達成するための要素や、そのために必要なタスクを考える逆算思考が強くなりました。社長と伴走支援をする人間として、率先垂範する姿勢を見せることで、一人でも多くの社長と一緒に目標達成を目指していきたいです。
次に、任された仕事やその期限に責任を持つ意識も以前よりも強くなりました。例えば期日管理ですと、本来の期限よりも必ず数日前に設定するようにしています。何かイレギュラーなことが起きても、日にちに余裕があればリカバリーが効きます。未来会計で関わる社長も、本業で忙しくされている方がほとんどです。あえて期日よりも物事を前倒しで進めることによって、やりたいことを最優先で実行していただけるように意識しています。
支援事例
Q未来会計に携わるようになって感謝していただけたことはありますか?
社長から「社員の考えを聞ける機会になってよかった」と感謝の言葉を直接いただきました。どの会社も私にとって大切ですが、今回は一社だけお話させていただきます。
その企業で実施させていただいている毎月の達成管理会議では、社長の他に経理担当と監査担当の合計3名に同席いただいています。最初は、社長が営業部長を兼任していることもあり、営業に直結する話も多く、役員は社長の話を一方的に受け取るだけの状態でした。
一方で、経理は売上や仕入の変動に対応する仕事が多いので、数字が変わるとその都度業務が増える仕組みです。売上が増えることは嬉しい悲鳴ですが、経理側の声を発言する機会がない、というのが当時の状況でした。
私が経営会議に入ることによって営業と経理の間で必要なコミュニケーションの場を設けることができました。他にもその企業が変化したことがあります。それまで営業会議は不定期開催で、立ち話程度で終わっていました。今ではきちんと現場メンバーと時間をとって現状を共有するようになり、確実に売上に対する意識に変化がありました。
社長からしたら「ただ当たり前のことができるようになった」と考えているかもしれません。しかし、当たり前のことが習慣になるまでが一番難しいです。目指す方向を社内にきちんと共有し、協力を得られてこそ、目標を達成しようという社内風土が生まれます。後日、社長から「社員の考えを聞ける機会になってよかった」と感謝の言葉を直接いただき、会社に対する連帯意識が芽生えているのも感じました。
Q応援する側としてその仕事に関われるのは、やりがいがありますよね?
会社の変化とともに、私自身も学びになることが沢山あります。未来会計業務の醍醐味は、一つの企業の目標達成を見届けられるところです。これは実際に未来会計に携わった人にしか分かりません。
Q未来会計のやりがいを強く感じました。未来会計プランナーとしてどんなことが目標ですか?
希望としては10年後を目標に、川崎市のナンバーワン事務所になりたいです。現在、未来会計は業務の一部になっていますが、ゆくゆくは事業の一部として確立できたら良いと考えています。未来会計の事業が拡大するにあたって、いつか私が担当を離れる時がくるかもしれません。その時に「担当を外れないでほしい」と顧客側から言われるぐらいの伴走者を目指します。
未来会計プランナーを目指す方へメッセージ
Q素敵な目標ですね!これから未来会計プランナーを目指す方へメッセージをお願いします。
未来会計は正解がないので、不安もありますが、面白い面が沢山あります。試行錯誤の連続ですが、課題を顕在化させて課題をクリアにするために伴走し、顧客により近い場所でサポートできるのは大きな喜びです。課題が価値に変化する目標達成の瞬間に立ち会えるのは、私たちにとって最大の報酬と言えるでしょう。中小企業の伴走者として、これからの日本経済を支えていきましょう。
中小企業の皆様へ「新たな宝の地図を描きながら、また旅に出ませんか?」
Q未来会計を知らない企業の方へ向けて、メッセージをお願いします。
もし今経営で悶々とする日々を過ごされているのならば、今の事業をスタートした時の気持ちを思い出してほしいと考えています。
本来、旅行の計画を立てるときと同じように、未来を思い描くことは楽しいものです。企業の将来を描くこともそうであるべきだと考えています。なかなか楽しく未来がイメージできない場合は、従業員や取引先など身近な人が喜ぶシーンを考えてみてください。身近な人が喜ぶことを実行することが、初めの一歩なのではないかと思います。
社長と一緒に将来の事業計画を立てるサポートをすることも多いのですが、徐々に社長の顔が明るくなり、ワクワクしていく様子を目にします。全ての社長に、その瞬間を経験してほしいです。その瞬間を一瞬で終わらせるのではなく、ワクワクする気持ちを持ち続けていただけるような伴走サポートをするのが未来会計の役目です。
未来会計では、将来の目標を定め、やるべきことの優先順位を整理していきます。「今日もやり切ったな、明日もまた頑張ろう」という達成感や前向きさが生まれる日々を過ごしたいと思っていただけたのなら、ぜひ一度未来会計を経営に取り入れてみるのをお勧めします。
前向きな感覚を従業員と共有しながら仕事に取り組めば、今の仕事がより楽しくなり、成長に繋がることも間違いなしです。
「新たな宝の地図を描きながら、また旅に出ませんか?そして、未来会計を取り入れて、会社の成長を盛り上げていきませんか?」というメッセージを送らせていただきます。