
「経営者と同じ目線で」二代目経営者の事業承継を成功に導く未来会計――税理士法人ひまわり 市川亮平

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蒲郡市の会計事務所が提案するのは、「経営者と共に成長する」未来会計です。東京での修行を経て地元に戻った二代目所長の市川亮平さんは、自身が経験した事業承継後の悩みや不安に寄り添い、会社の未来を経営者と共に描きます。事業承継や自社の成長に悩む中小企業の経営者必読の一記事です。
税理士法人ひまわり
税理士 蒲郡事務所所長
市川 亮平 横浜国立大学経営学部を卒業後、都内の大手税理士法人の経験を経て税理士法人ひまわり蒲郡事務所の所長として社員税理士に就任。クラウド会計やDX化によるバックオフィス業務の効率化や経営計画の 立案に注力し、現在は未来会計による中小企業の経営力強化・黒字化のサポートを行っている。また一般社団法人相続相談窓口センターの理事として、生前対策や相続税申告、二次相続に向けたサポートなども行なっている。 |
家業を継ぎ、東京修行で得た力を地元へ
Q.会計事務所を職場として選ばれた理由を教えてください。
父が会計事務所を運営していたためです。子供の頃から顧問先に頼られている父の背中を見て「やりがいのありそうな仕事だな」と思っており、資格の試験も苦手ではないと感じていました。大学の頃に兄から「事務所を継がない」と言われたことがきっかけとなり、私が継ぐことにしました。26歳の頃に資格をほぼ取り終え、修行という形で都内の税理士法人へ入所したのが、正確な業界デビューとなります。
Q.東京時代の印象をお聞かせいただけますか?
東京時代は、ベンチャー企業やIPOを目指すような会社の税務が主な業務でした。「株価を上げたい」といったニーズにお応えするために、先輩に必死でついて行くような毎日です。百億円レベルの売上を目指すお客様も多く、税務処理一つで何千万円も税金が変わるため、非常に緊張していたと思います。働き方に対する縛りも今よりもゆるい時代だったこともあり、毎日終電まで働いていました。
お客様がこちらを見る目も、資格の有無に興味はなく、能力や実績が全てという感じです。また、監査法人出身の取締役がいる企業などもあり、プレッシャーも感じます。レベルが高くて厳しい世界だと、ひしひし感じていました。
Q.東京から地元・蒲郡に戻られた際は、どのような印象を受けましたか?
状況が180度変わりました。お客様の割合としては、個人事業主と法人がちょうど半分くらいでしょうか。1円単位の計算を続けてきた東京時代と比べると、ある種のカルチャーショックを受けました。「役員報酬はいくらに設定すればよいですか?」「うちはいくら売上を出せば利益が出るんですか?」などの質問の衝撃は、今でも忘れられません。
「自分の会社のことを理解しないで経営をして大丈夫なのか」と思い事務所の先輩に話したところ、通帳の現金が増えていたら利益が出ている、減っていたら出ていないと認識していると教えていただきました。東京時代とは別の意味で責任を感じるようになったことが、未来会計に取り組み始めたきっかけかと思います。
地元の会社の多くは、「有資格者」「会計事務所に勤めている」というだけで私に全幅の信頼を寄せてくれます。「先生が言ったので、この契約はやめます」のように言われることも珍しくありません。これはなかなかのプレッシャーです。もっと幅広く知識を吸収して、正確な経営判断の支援を提供しなければならないと思うようになりました。
「中小企業を支えたい」という原点
Q.未来会計プランナーとして取り組み始めたきっかけについて、お聞かせください。
お客様からの経営に関する質問に対して、一般論しか答えられない歯がゆさがきっかけです。「売上はどうしたら上がりますか」「利益はどうしたら作れますか」と聞かれるたびに、明確に回答できるようになりたいと考えました。まずは経営関連の勉強時間を捻出するために事務所の効率化を1年かけて進めました。時間を作れるようになった頃に出会ったのが、未来会計です。「中小企業をサポートしたい」という理念が私とも合致していたので、未来会計プランナー研修の受講にいたりました。
Q.御社では、未来会計をどのような形で提供されていますか?
未来会計分野の商品は、毎月のミーティングをコーチング形式で行うMAS監査サービスのみ提供しています。私を含め幹部クラスの3人が担当しています。税務も兼任しているため、提供商品を絞っている状況です。
最初は私ひとりで担当していました。はじめの半年ほどは事務所内に未来会計を浸透させるために社内研修を行いました。そこから、現在は各担当者が自分が担当しているお客様の中でペルソナに沿った応援したい企業に声をかけてもらうようにしています。
ペルソナとしては、私と同じような2代目の経営者さんや若い経営者さんをターゲットにしています。一般的に税理士は年齢層が高く、経営者からしたら気軽に相談しにくいと伺っておりましたので、当時30代前半だったこともあり若さを武器にしようと思いました。
また、私自身も事務所を引き継いだ際、どうしたらいいか分からない不安な気持ちを持っていました。そういった経営者さんの中には数字が読めないという方が少なくなかったので、同じような事業承継後の経営者を応援したい想いがありました。
二代目社長への支援事例
Q.印象に残ったお客様の事例をお聞きしてもよろしいでしょうか?
経営を持ち直した二代目社長の会社についてお話しします。こちらのお客様に毎月現状のご報告をさせていただく中で、前月と重複した説明を繰り返すことがありました。そこで経営状況を十分に把握されていないと感じ、「将軍の日」で五か年計画作成のご提案をいたしました。その際、言われた通りの意思決定で計画を作ると大赤字で資金ショートする状況でした。
そこから我々がサポートし黒字が見える計画を立てて伴走支援に入ることになりました。現状を自覚されてからは、社長から会長に「こういったことを勉強しに行きたい」とおっしゃるなど姿勢も積極的になっていきました。売上が伸びていき、当時5か年計画で作った数字に前倒しで追いつきつつあります。意識改革に貢献できたという点が「やって良かった」と実感したケースですね。
Q.そちらの社長には、どのような未来会計のサービスを提供されたのですか?
毎月ミーティングをおこなう伴走支援です。実績をいただくタイミングが遅かったこともあり、現状の売上の実績のみ拾い、計画との対比を行いました。また、二代目社長にとっての「理想の会社」についてヒアリングも進めました。その実現に向けて、新しいツールや最適な業者さんの紹介などもさせていただきました。
またこちらの会社さんは会長の力が強く、特に二代目社長との会話は親子という間柄もあり、対立することが多くなりがちでした。そのため私が間に入り、調停役のような役割も務めました。社外取締役に近い同じ目線を持った良い壁打ち相手にはなれたのではないでしょうか。こうした形で企業に関われるのも、未来会計の醍醐味かもしれません。
Q.他にも印象に残る会社があれば、お聞かせください。
こちらの会社も社長が二代目で、数字を見るのがあまり得意ではありませんでした。それでも売上を伸ばすために経営計画を作り、幹部の方々から目標と理念を社員さんに強く訴えかけてもらうと、皆さんの意識が変わりました。例えば、今まで現場の方で曖昧になっていたお客様のやり取りの報告が上がるようになり、経営判断がスムーズになったかと思います。
それまでずっと横ばいだった売上が伸び、利益も出ていきました。計画で立てた目標も、3期が終わる段階でしっかりクリアされていましたね。実はこの会社さんは初めて未来会計を提供したお客様でした。具体的な目標を立てると組織は変わる姿をリアルに実感できた点で非常に印象に残っています。
経営者の壁打ち役としての役割
Q.未来会計を提供する人材に必要な能力は、何だとお考えですか?
一番は、ヒアリング能力だと思います。コミュニケーションの部分ですが、話自体はあまり上手くなくてよいです。税務会計業務では報告が中心ですので我々が話すことが多いですが、未来会計ではお客様がずっと話しています。
基本的にはヒアリングを通じて、お困りごとを引き出します。お困りごとは、ご自身の夢と現状とのズレだと思いますので、そのあたりを話の中から引き出す能力が必要だと思います。
Q.計画作成などの会計的な技術はどうでしょうか?未来会計に必須でしょうか?
数字の作り込みに関しては、一般的な税理士業務の知見が前提にあれば対応できると思います。簿記二級レベルの知見があれば、基本的には十分対応可能です。それに、会計事務所は数字をつくる能力に長けた人材がたくさんいるので、フォローし合うことも可能でしょう。
ですので、未来会計を手がける形として数字作りは得意なスタッフに任せ、社長に対してヒアリングやコミュニケーションに注力するという方法もあるのではないでしょうか。
Q.未来会計プランナーという職業の魅力や将来性については、どのようにお考えですか?
最大の魅力は、お客様に心から感謝していただけることです。社長は孤独なので、同じ方向を向いて会社の成長をサポートすると本当に喜んでもらえます。様々な会社の経営に関わり、その経験を次のお客様に活かすことでキャリアとしても大きく成長するのではないかと思います。成長する楽しさを感じることができるので、当社の職員にも進んでやってほしいですね。
未来会計の将来性は、非常に高いと思います。今後の会計事務所にとって未来会計のような経営支援が必須業務かと思います。昨今は、AIの発達などで会計を作る部分の工数は大幅に下がりつつあります。全てが自動化された後に会計事務所に求められるのは、経営や人にフォーカスしたサービスが必要になるはずです。お客様のブレインとしてお客様に関わり、コーチングという形で色々なお話ができることが、魅力ある事務所の条件になると思っています。
Q.市川さん自身がこれからのスキルアップやチャレンジしたいことは何かありますか?
役員会のような会議形式でサポートを提供したいです。現在はトップの方とミーティングさせていただくケースが多いです。どのクライアントも自走できる組織をつくりたいというお気持ちをお持ちです。現場担当者さんや責任者さんからの報告を交えた、会議型で進める未来会計ができたらと考えています。まずは、地元である東三河エリアで未来会計をさらに普及させたいです。
中小企業経営者の方へ
Q.地元の中小企業経営者へのメッセージ
昨今はコスト高や人材不足、事業承継難などの社会問題、またDX化やAIによるテクノロジーの進化など様々な状況変化が起きています。経営に対する不安やお悩みをお持ちの方も多いのではないでしょうか。
そういう方にこそ、未来会計はおすすめです。社長の思いと会社の利益を紐づけて組織力を強化し、百年続く企業を一緒になって作っていければなと思っております。地元で未来会計を取り扱う数少ない事務所の一つとして、地元企業の活性化に貢献できれば幸いです。
