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所長・代表

「“先生”ではなく伴走者に」地元に根ざす未来会計の流儀に迫る─株式会社ケーエフエス 齋藤 健太

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目次

福島県郡山市のケーエフエスグループ未来経営パートナーズ株式会社。ここで未来会計の第一線を担う齋藤健太氏は、税務にとどまらず、経営者の「あるべき姿」を数字に落とし込む支援に情熱を注いでいる。地元・宮城での原点から、伴走型経営支援へ至る道のりとは──。

ケーエフエスグループ
未来経営パートナーズ株式会社 代表取締役
株式会社ケーエフエス執行役員
齋藤 健太
2010年2月に小島会計事務所(現・税理士法人ケーエスエス)に入社。入社後は巡回監査を中心に資産税、社会福祉法人、公益法人など、会計事務所での業務を一通り経験する。初期のころからMAS監査業務にも従事。現在はケーエフエスグループの未来会計の責任者としてほとんど専任で従事。

会計事務所に転職した理由

Q.会計事務所を職場として選ばれた理由を教えてください

背景に親の存在があります。私の親は自営業で飲食店を経営しています。こどもながらに一生懸命仕事に取り組んでいる親の姿を見て、頑張る経営者のお手伝いができないかとずっと思っていました。

大学時代、職業を調べる中で会計事務所に興味を持ちました。なぜなら会計事務所は経営者と接する機会が多い仕事だったからです。新卒ではSEの会社で営業をしていましたが、経営者のサポートをしたいという思いから会計事務所に転職しました。

Q.大学卒業後に会計事務所を選択されなかった理由を教えてください。

会計事務所で働くには圧倒的に足りない能力が2つあると感じたからです。1つ目がパソコンスキルで、2つ目が営業力です。このふたつの能力を身に付けるために、敢えて苦手なシステム関係の会社の営業職に就職することにしました。

結果的にいきなり会計事務所で専門職として就職するよりも一般企業で働いてよかったと感じています。なぜなら会計事務所で働かれている人は、営業や交渉事が苦手にしている方が多いからです。

Q.数ある会計事務所からケーエフエスグループを選ばれた理由を教えてください

私は宮城県塩釜市出身で転職するなら地元に戻ろうと思っていました。塩釜は仙台の隣で、当初仙台周辺の会計事務所を探していました。しかし、求人票を見てもピンとくる会計事務所がありませんでした。そこで福島県まで範囲を広げたところ、小島会計事務所(現在のケーエフエスグループ)を見つけました。

Q.どこに魅力を感じられたのですか?

私のイメージで会計事務所はコンサルティングをやるものだと思っていました。そのため通常の会計事務所の求人票には「決算書の作成」「試算表の作成」等の事務作業が中心だったこともあり、ピンときませんでした。

小島会計事務所の求人票には「お客様の業績を上げるお手伝いをする」というニュアンスのワードが記載されていました。それを見ておもしろそうだと感じ応募しました。入社してみると、「未来会計」にしっかり取り組もうとしている事務所だったこともあり、自分の勘に従ってよかったなと思いました。

チャレンジの根幹は地域・お客様に貢献するという想い

Q.未来会計に取り組むにあたって磨いたスキルはありますか?

会計事務所に勤めるので、簿記や法人税・所得税など税法の勉強はもちろんしました。それ以外に経営理論や経営分析、マーケティングについても勉強しました。直接勉強するだけでなく、普段から興味関心を持つことを意識していました。税務会計の知識に偏らないように経営コンサルティングの勉強も意識して行っていました。

Q.新しい業務に前向きにチャレンジするために意識されていることはありますか?

根幹に「地域のため」「お客様のため」という想いがもちろんあります。何よりも自分がやっていて楽しめる、あるいは興味を持てる業務かどうかが大事だと思います。興味があると自分で調べることや勉強することが苦ではなくなります。

最近若手や新卒で弊社に入社される方は「地域やお客様の役に立ちたい」という貢献意識を持たれている方が多く、地域に根差した会計事務所に入社してくれることがありがたいです。

Q.未来会計業務に取り組むなかで大変だったことはありますか?

税務会計と比べると「正解がない」ことに難しさがあるかもしれません。税務会計は正しい数字を期限内に作成し提出するので、ある程度型が決まっています。未来会計は経営者の想いを数字で「翻訳していく」ので、経営者の数だけ正解があります。その辺が難しいというよりも工夫が必要なことだと思います。

Q.「翻訳していく」ことについてもう少し詳しく聞かせてください。

経営者の頭の中には、「こうしたい」「将来こうなりたい」という『あるべき姿』があります。そのための意思決定に迷いがあって判断できないことに対して、数字と行動計画を通じてルート設定することが「翻訳していく」ことであり、未来会計だと思っています。

数字や文章として表現することで経営者自身もわかりやすいですし、スタッフや外部の取引先にも理解してもらいやすくなります。

支援事例

Q.印象に残っているお客様について教えてください。

私が入社して2年目くらいから関与しているお客様についてお話します。もう12年くらい未来会計を導入いただいています。先方は起業したてで年間の売上が1000万円もないころでした。直近の決算では売上が8億になっています。従業員数も2名から30名程に成長されています。

社長がいつも「経営計画がないと今の自分はなかったし、今経営している会社はなかった」とおっしゃってくれています。未来会計業務は広い意味で捉えるとコンサルタント業務に入りますが、一般的なコンサルとは違います。

一般的なコンサルだと顕在化された課題がクライアントにあり、そこにコンサルタントが入って、課題解決をしたら終わりというケースが多いです。未来会計はコーチに近い関係性でずっと「あるべき姿」描き、課題の特定から継続して関わることで業績が上がっていく伴走型の関与スタイルです。

コロナ禍のような有事で業績が悪くなったとしても一緒に解決策を模索します。未来会計で関わっているクライアントは経営計画をつくる前には「経営計画をつくる意味がわからない」とおっしゃいますが、最後には「経営計画をつくってよかった」「もっと早くつくればよかった」とおっしゃってくれます。このようなクライアント様に出会うと、経営計画の普及は未来会計に取り組んでいる会計事務所の役割であり、使命だと改めて感じます。

未来会計プランナーとして意識していること

Q. 未来会計業務に取り組むにあたり普段から意識されていることはありますか?




自分たちは「教える側ではない」というスタンスは常に意識しています。

会計事務所と言えば専門家で先生業なイメージを持たれがちです。しかし未来会計業務ではクライアントにそのイメージを一切取っ払っていただくよう「“先生”と呼ばないでください」とお伝えしています。「教える側」ではなく、一緒に走る経営のパートナーとでいたいと思っています。

また、人の意思決定を引き出す仕事なので、相手が何を考えているのかは常に考えています。学問で言えば「行動心理学」の分野は意識して情報収集しています。我々は数字のプロなので、どうしても論理的に正しい数字を作ればいいと思いがちです。

しかし実際には経営者が納得して意思決定した上で、行動に移さなければと数字という最終結果には繋がりません。相手が納得してなかったら意味がないんです。

納得して意思決定いただくには数字に表現されていない感情の理解が大切だと思います。未来会計のスタートは社長の『あるべき姿』です。『あるべき姿』から逆算して、経営戦略や経営計画を立てるのが未来会計です。そのため明確な数字以上に社長の想いや願望が大切です。数字で納得して動くよりも、「これをしたい」「こうなりたい」あるいは「こうなりたくない」という感情を理解するための努力は意識しています。

Q. 未来会計プランナーとしての目標・大事にしていきたいことを教えてください。

今後は「未来会計」の普及活動に力を入れていきたいと思っています。現在、全国の会計事務所数は3万事務所弱です。そのなかで、未来会計に取り組んでいる事務所は多くても1割弱の2~3千事務所程ではないかと思います。きちんと実践して事業化できている事務所になると、1割弱の中のさらに1割にあたる約200~300事務所程度ではないでしょうか。

200~300事務所では、全国の中小企業をサポートするには心もとないです。会計事務所のおかげで業績が良くなったと思ってもらえるような地域のインフラを提供するためにも、未来会計の普及に取り組んでいきたいです。

そのために自分自身も頑張りますが、自社の部下・後輩・同僚にしっかり未来会計の考え方ややり方を伝え、今の会計業界に従事されている方々にも未来会計の重要性を理解してもらうために活動していきます。

メッセージ

会計業界を目指している方へ

今までの会計事務所の主力業務である試算表や決算書の作成は、過去の数字を集計して評価する例えると通信簿づくりに似ています。未来会計は経営者にとってカーナビのような役割を果たします。カーナビは目的地を設定するとルートの選択ができます。経営でいうと目的地に対して人やお金・時間をどのように使うのかを一緒に考えるのがルート設定のイメージですです。経営者が会計事務所に本当に求めているのは、「どう経営していったらいいかわからない」「将来が不安」「こういうことをしたいと思っているがモヤモヤしている」といった悩みに対して相談に乗ってくれる経営パートナーです。明確な回答や方針を示せるようにサポートしてくれる存在です。それができるのは、やはり地元の会計事務所だと思います。地域に貢献したい、役に立ちたいと思っている方は、ぜひ未来会計に取り組んでいる会計事務所と一緒に仕事をしてもらいたいです!

中小企業の経営者へ

会計事務所を選ぶ視点として「安い」ことや「所在地が近い」以外の選択肢を持ってほしいと思っています。過去の数値だけでなく将来の数値も一緒に考えてくれる経営パートナーになれる会計事務所を選んでいただけるといいなと思っています。



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インタビューをした人
黒島