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所長・代表

「会計士はストーリーを描く仕事」——一般社団法人日本経営支援協会 松下英司

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目次

熊本県熊本市を拠点とする「一般社団法人 日本経営支援協会」代表の松下英司さんは、自らの経験と情熱をもとに、未来会計プランナーとして経営者の夢に伴走しています。数字の裏側にある「想い」を読み解く力、そしてストーリーとして描く力が社長の夢実現をサポートする未来会計プランナーの真髄です。志あるあなたに贈るメッセージがここにあります。

一般社団法人 日本経営支援協会
公認会計士・税理士
松下 英司
熊本県熊本市出身
平成21年に公認会計士試験に合格後、KPMG 有限責任あずさ監査法人に就職。 当該法人においては大手上場企業の会計監査とIPO、企業再生関連の業務に従事。 平成25年に熊本市の松下欣司税理士事務所に入所後、税理士の父と共に、他士業との連携を深め、医療・社会福祉関係も含めた企業再編、事業承継、相続対策のサポートにて地元企業に寄与。 令和2年にLONG AGE税理士法人の代表社員に就任。地元企業の上場支援にも貢献後、福岡に未来プラス監査法人を設立、その代表社員に就任。

事務所紹介

Q.一般社団法人日本経営支援協会について教えてください。

父が会計事務所を開業し、私が2代目として事務所を承継して現在に至ります。元々、私の家系は酒屋の系列一族でした。酒屋で商売をしていた所から父が税理士の資格を取り、そこから転身して会計事務所を開業したという歴史があります。商売家系であったこともあり、「お客様のために、自分達のために、世の中のためにという『三方よし』」の姿を徹底して体現しよう」という意識が強い会計事務所です。

私も小さいながらに、父が商売をしている姿を見ていたので、現在の事務所経営においてもその感覚が強くあります。私は元々監査法人で経験を積んでいましたが、約12年前、私が30歳の時に父が一人で営んでいた会計事務所に戻ってきました。

未来会計との出会い

Q.未来会計との出会いを教えてください。

未来会計と出会ったきっかけは、MAP経営さんからの営業ですね。一旦はその営業を断ったんです(笑)。私が戻ってきたときに、商売気質の強い父は、「付加価値の高いサービスにもっと取り組んでいきたい」と言っていました。その背景もあり、MAP経営さんと出会ったのだと思います。

しかし、当時の状況をみて、私は付加価値の高い業務は今すぐに取り組めないと判断しました。理由は、職員には税務会計を多岐に渡って、深く細かく業務を担ってもらっていたので、さらに負荷のかかる業務に取り組んでもらうのは正直大変なのではないか、と思っていたからです。

その時に、「未来会計を先行して取り組んでいる事務所の話を聞きに行かないか?」と父から提案があり、長崎にあるIG会計グループ(岩永会計グループ)へ一泊二日で見学しに行くことにしました。これが今から10年前の話です。本格的に未来会計に取り組んでいる事務所をみた瞬間に、「これだ!」と思い、自社でも未来会計を付加価値業務として取り組もうと決意しました。

余談なのですが、見学初日の夜に、岩永先生から「君は過去の数字と向き合っているより、未来会計の方が向いているよ」とはっきり言われたのも覚えています。

Q.「未来会計を事務所で取り組む!」と決断されてからまずはどんなことに取り組まれたのですか?

岩永先生に、まずは自事務所のMAS監査をしてもらえないかとお願いをしました。しかし、岩永先生からはっきりとした回答がもらえず(笑)。「まずはとにかくやってみよう!」という精神でした。最初に当時代表の父と母に向けて、将軍の日(中期5ヵ年経営計画立案セミナー)を事務所の計画立案の内容でやりました。

両親も面白いと言ってくれて、そこから自分なりに、よりお客様へ伝わる言い回しや表現方法をアレンジして、作り込みを始めました。そこが確立して、徐々に顧問先にすすめていきました。

Q.将軍の日に参加したご両親の反応がよかった、というのは嬉しいですね。松下さんご自身も、将軍の日はどんな所に価値があると思われていますか?

「夢」という素敵なものを、数字に落としこむことで表現できるというところですかね。「現在は、過去から何パーセント上がっている状態」という話ではなく、5年後のビジョンを描いて、達成までの道筋を逆算していくことに大きな価値を感じております。

極論をいうと、将軍の日は普通の事業計画を作る日です。しかし、これまでの延長線で描けそうな未来ではなく、「本当は社長がどういう経営がしたいのか」をしっかり対話をしながら作り込める事業計画書は、夢の詰まり方も違います。

想いある未来を、ヒト・モノ・カネの観点から数字に落とし込む醍醐味が、今までの過去会計とは全く違う視点で面白いと思いました。そこに魅力を感じ、どんどん私自身も未来会計の世界に入り込んでいきました。

未来会計プランナーの面白さ

Q.未来会計プランナーとして大活躍中ですが、さらにこの職業の面白さを教えてください。

沢山ありますね!まずは、関わる経営者の方々の笑顔を作り、売上を最大化させられるところが面白いです。企業経営に未来会計を取り入れていただき、社長が上場の夢を叶えられた支援事例があります。私では叶えられなかった夢を社長に託して、叶えていく道のりをご一緒できるのは非常にやりがいを感じます。

次に、未来会計を通じて、日本全国にいる素晴らしい方々と出会い続けられることも面白さの一つです。そのご縁で、世界的ファッションデザイナーであるコシノジュンコさんともお会いすることができ、とても刺激を受けました。

お客様満足を考え抜いた結果、私たちが持つ知見のレベルを上げ、それを還元し、経営者の方に伴走するだけでなく、そこに関わる人々の人生が豊かになるお手伝いができているというのが未来会計プランナーとしての誇りです。

Q.「未来会計に取り組んでよかった!」というのがひしひしと伝わります!三方よしという観点で、会計事務所が未来会計に取り組む意義とはどんな所なのでしょうか。

監査法人時代の先輩からいただいたことばで、今でも大切にしているものがあります。「会計士は物書きとしてストーリーを描くんだ」ということばです。「出てきた決算書の数字と、その根拠にたどり着く過程を想像して、それが企業経営において正しい道のりなのかを見る」といった意味でした。

これは過去会計・未来会計のどちらでも大切な視点ではあります。

一般的な会計事務所の従来の仕事は、過去会計と呼ばれ、過去の数字の集積を正しく計算していくものになります。会計業界にいる方や金融マンは、決算書を基に、株価算定をしたり、企業の信用度を図ったりしていますよね。しかし、その中でも誰かの努力で出来上がった数字の集積であるものだと認識を持っている人は少ないです。

未来会計という分野を学ぶことによって、過去会計で出していた数字の成り立ちを認識できるようになり、大事な視点を養えるようになると思います。未来会計の方では、将来の数字とその根拠の間にある行間やストーリーを想像するわけなので、表現力やストーリーの緻密さなど、より高度なものになりますね。

大切なのはストーリーを描く力とその磨き方

Q.松下さんが大切にされている「ストーリーを描く力」はどのように磨かれてきたのですか?

いいところを聞いてくれますね!(笑)実は高校時代に、ほぼ毎日映画を観ていました。漫画や音楽鑑賞も好きで、描かれるストーリーに入り込んで、登場人物の情景を想像したりすることでそのスキルを磨いてきました。

Q.まさか趣味からそのスキルを磨いていたとは思いませんでした!もう少し具体的に教えていただけますか?

絵や映像、音楽といった文化の一つから磨くのはお勧めです。脳の作りの話になるのですが、イメージを司る右脳と言語を司る左脳をバランスよく使えている人が社会的に成長している人が多いと思っています。

左脳で考えると数字を中心に物事を捉えがちになってしまいますが、右脳も使って経営の背景にあるものをイメージできるようになると、社長の想いをくみ取った彩りのある経営のサポートができるようになると考えています。

会計事務所の仕事は、数字があってこそ成り立つ仕事ではあります。ですが、本当に社長に寄り添った仕事であるかと考えると、そこで数字とばかり向き合っているだけではいけないとも思うんです。また、それは経営者にも同じことが言えます。これからの会計人や経営に携わる方には、想像力を働かせるようなスキルも同時に磨いていくことが大切だと伝えたいです。

Q.経営者の方も「物語を描くスキル」が大切なのですね。文化に触れる機会は今ではどのように作られているのですか?

日々、目の前の業務に奮闘する経営者の方々にも、芸術などの文化に触れる機会を作ることに力を入れています。三方よしの観点から見ても、利益の一部は文化継承のために使うというのが事務所の方針です。そのため、日本経営支援協会ではCSR活動を積極的に行っています。その場に経営者も知らないうちに参加してもらうことで、社長自身も文化継承として社会貢献を担っていただいているという、よい循環が作れています。

これからも意義のある文化を継承していくためにも、未来の還元先を決めた上で、関与先様と関わっていきたいですね。

Q.とても多彩な未来会計を提供されているのですね。現在のLONG AGE流に至った経緯を教えていただけますか?

年々、未来会計がより一層、彩あるサービスとして提供できるようになっていると感じています。というのも、以前は未来会計に対する固定概念が強く、マニュアルをガチガチに作って数字と向き合っていたからです。

現在のようなスタイルになったのは岩永先生が仰っている、「未来会計は社長の御用聞き」という言葉から着想を得ています。今でこそそう思うのですが、社長の周りでガチガチに数字を作りこまれて忙しくされているのも嫌じゃないですか?(笑)

社長の御用をしっかりと聞けるように、余裕を持つことをさらに意識するようになりましたね。「社長にとって必要な情報をいつでも持ってきてくれる余裕のある人」になれる方が、社長により良いサービスを提供できていると感じます。

未来会計のお話しを沢山してきましたが、過去の数字と向き合うことも必要不可欠です。過去と未来の両方を尊重し合いながら、三方よしが体現できる事務所として益々発展していきたいですね

未来会計プランナーを目指す方に向けて

Q.未来会計プランナーを目指す方に向けてメッセージをお願いします。

会計業界で働く人口が減ってきているという話をよく聞きますが、会計人として楽しんで仕事をできていれば問題ないと思います。

私自身、未来会計に取り組みはじめてから現在に至るまで、様々な出会いを通じて楽しく仕事をしてきました。未来会計の取り組みは、はじめは数字を中心に徹底的に作りこむものだと思い、取り組んでいた時期もあります。今では経験値も増して社長の多様なニーズにもこらえられるようになり、未来会計への考え方や取り組みそのものも年々、変化し続けています。

その変化も楽しみながら、自分自身がより楽しめると思う先生の懐に飛び込んでみてください。仕事に関してはもちろんですが、同じ業界で奮闘する仲間として、一緒に人生観も学んでいきましょう。


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インタビューをした人
黒島