
「困った時の救世主」として、税理士の枠を超え信頼される支援とは?

目次
税理士法人畠経営グループ 宮本 将太 1982年生まれ、2003年入社。専門学校卒業後、新卒で畠税理士事務所(現 税理士 法人畠経営グループ)に入社。 入社3年目から自社開催「将軍の日」の講師を成り行きで始め、その後MAS監査のチームに配属される。製造業、サービス業、医業等の様々な業種で、創業計画から事業再生計画までの各フェーズの計画立案支援を実施。 経営計画立案支援数は300社を超え、チーム配属当時は2社だった事務所全体のMAS監査契 約数は現在45社に増加。 「MAS監査契約数100社」をチームの目標に掲げ日々奮闘中。 |
偶然始まった「社長と一緒に未来を描ける仕事」
Q.会計事務所を職場として選ばれた理由を教えてください
高校卒業後「資格を取得すればどこかには就職ができるだろう」と考えて経理系の資格が取れる専門学校へ進学しました。
しかし、私が就職活動をしていた時は「就職氷河期」と呼ばれる頃で、就職先がなかなか決まらず困っていました。その頃通っていた学校のオーナーが、現会計事務所の創業者である畠善昭氏であり、拾ってもらったような形で就職が決まりました。
Q.会計事務所に入られて最初に取り組まれた業務は何でしたか?
入社後は税務監査、決算書・申告書の作成補助といった業務をおこないました。入社から3か月程経つと、先輩と一緒にお客様の元へ出向くようになり、半年後には地元企業や個人事業主の方を担当させていただきました。
Q.入社半年で、社長とうまくコミュニケーションはとれましたか?
当時担当させていただいた企業の社長は、自分の父親と同じ世代の方が多かったこともあってかかわいがっていただきました(笑)思い返すと非常に恵まれた環境だったように思います。
Q.未来会計にはどれくらい取り組まれていますか?
未来会計に関わるようになってから、20年ほどになります。入社してから3年〜4年目頃に取り組み始めて以来、セミナー講師も含めて現在まで続けています。現在当社では45社ほど未来会計で契約をいただき、そのうちの10社は私が担当させていただいています。
「カッコいい先輩」へのあこがれから始まった未来会計
Q.未来会計業務に関わり始めたきっかけを教えてください。
入社2年目からは売上高等の営業目標が設定されたのですが、それを達成できなかったことがきっかけと言えばきっかけです。どのようにすれば営業が出来るようになるのかを相談したくて、当時社内で営業成績トップの先輩に話しかけました。するとその先輩から「セミナーの運営を一緒にやらないか?」と誘われました。
その先輩は未来会計に取り組まれている人であり、当時から自社で毎月開催していた「中期5か年経営計画策定教室 将軍の日」というセミナー(以下、将軍の日)の講師をしていました。私が話しかけたのがちょうど「将軍の日」終わりで、後片付けをされていたタイミングでした。今思うと、「見てないで手伝えよ!」ということだったと思うのですが、当時の私は言われるがまま、「将軍の日」の運営の手伝いをすることになりました。
経営計画や未来会計のことは何一つわからず「営業成績トップのカッコいい先輩へのあこがれ」から未来会計業務に関わり始めました。
Q.実際に「将軍の日」に関わって、どのような印象を持たれましたか?
率直に楽しかったですね。一企業の社長が私のような若造にご自身の夢を熱く語ってくれました。社長と一緒になって、どうやってその夢を達成するのか、を考える非常に濃厚な体験をさせてもらっています。何より印象的だったのは、「将軍の日」終了後にほとんどの社長から感謝していただいたことです。自分の仕事で喜んでくれる人がいる、ということにやりがいを感じています。
Q.宮本さんが担当された社長は、何をそこまで喜ばれたのでしょうか?
「将軍の日」は単なる数字のシミュレーションではないから、だと思います。我々は会計事務所ですから数字を扱うのは得意です。しかし中小企業の経営者で数字が得意だという人はそれほど多くありません。ほとんどの社長が数字のことが苦手だといっても過言ではないと思います。 その社長に「5年後の利益をシミュレーションしましょう、今後の資金繰りのシミュレーションをしましょう」と言っても、社長からしてみると「必要だとは思うけどやりたくない」というのが本音だと思います。
数字をみていくことが重要なことは百も承知していますが、「将軍の日」では数字よりも「社長の夢」を聞くことを重要視しています。社長からしてみると自分の夢を聞いてくれる人というのはそれほど多くないと思います。社長の夢を聞いて、社長自身もまだ言語化できていない自社の未来を具体的にしていく。そのツールとして数字をつかって客観的に社長の夢を形作っていくのが「将軍の日」の価値の一つであると定義しています。
「将軍の日」を進めていくと社長の夢や会社の方向性、ビジョン等、社長の中でこれまで曖昧だったものが明確になっていきます。終わるころにはスッキリしたようなお顔をされる社長が多いように思います。
経営を俯瞰的に見る+一人ひとりの努力を見る
Q.未来会計の実践を重ねるにつれて、宮本様の中で変化された点はありますか?
当初は社長とだけお話することがほとんどでしたが、今は経営者や社長といったトップ層だけでなく、その会社の役員/部長/課長/係長/一般社員/パート社員/社外関係者等、様々な役職や立場の方とも直接お話をさせていただき一緒に未来会計に取り組むことを重要視しています。様々な立場の方と関わり未来会計に取り組むことで組織は変わり、会社はより良くなると信じています。
Q.具体的に、多様な方々とのコミュニケーションで組織はどう変わるのでしょうか?
先ほどお話しした通り、私が担当しているお客様、社長のほとんどが数字のことが苦手です。そしてその会社の社員の方の多くが、やはり数字のことが苦手です。未来会計では数字は使って社員さんの行動を促す場面が多々あります。そのときに数字が苦手な社長が、同じく数字が苦手な社員さんに「わが社の売上目標は〇〇で、それにより…」みたいな話をされても、社長が本当に伝えたいことが伝わらないと思います。私の役割の一つは「社長の想いを数字を使って、わかりやすく伝える」だと定義しています。社長の意図を正確にわかりやすく、客観的に伝える事で、今やらなければならないことは何か?自分達の努力がどういった成果につながっているのか?等が伝わりやすくなります。
社員さん一人一人のがんばりが数字にあらわれてくるとそれがモチベーションの向上につながります。強い組織の共通点のひとつは、社内のコミュニケーションが曖昧な言葉でなく、数字を使って行われている、ではないでしょうか。「売上が予算に足りないから営業を頑張ろう」よりも「売上が〇〇円予算に足りないから、テレアポの件数を○○件に増やそう」の方が結果はでる可能性は高いですよね。そうやって行動を数値化し、次の行動につなげることで結果がでる。その結果の一部を社員さんに還元する。会社も社員さんも双方がよい状態になるように導くことが未来会計の価値です。
世の中が大きく揺れ動いたリーマンショックやコロナ禍の未来会計
Q.未来会計業務に取り組む中で、大変だった経験も共有させてください。
大変なのは、リーマンショックのように自分達の力ではどうにもできないくらい外部環境が悪化した時ですね。元請けが倒産した、街中に人がいない、地震でインフラが崩壊した等、企業の力だけでは対応しきれない緊急事態時に、自分達にできることは何かと考えさせられます。
そのような中で自分達にできることの一つとして、とにかく社長の話を聞くことだと思っています。外部環境がとんでもなく悪化したとき、最も不安なのは社長です。しかもそんな不安や愚痴を社員さんに聞かせるわけにはいきません。ですので、私達が社長の話を聞くことによって、社長自身が思考の整理ができ、今できること抽出し着実に実行していくことが大切だと思っています。苦しい時の社長を見るのは辛いですが、その時に社長が相談できる、愚痴をこぼせる存在でいることがパートナーとしての使命だと思っています。
リーマンショック、コロナショック、そして昨年1月に弊社の本店所在地である石川県で発生した能登半島地震のとき、なるべく社長のところへ出向いて話を聞くようにしていました。
社長との会話で意識していること
魔法の言葉「最近どうですか?」
Q.まずは社長のお話しを聞くことを意識されているのですね。宮本様がお話しの聞き方で具体的に意識されていることはありますか?
私はシンプルな質問をまず社長に投げかけることから始めています。「社長、最近どうですか」と聞くだけです。「どうですか」とだけ聞かれた社長は、今一番気になっていることを答えてくれます。それは会社の数字や資金繰りのことに限らず、時には人事のことやマーケティング、業界特有の課題といった私の専門外のことを話されることも多々あります。社長からどんな話がでてくるのかはわからないので、正直怖いと思うこともありますが、それでも社長が今一番気になっていることをお聞きすることは大事だと思います。その話を切り口に会社の課題について話を深掘りしていくのが私の未来会計におけるパターンになっています。思いもよらない社長のお困りごとを引き出せる「魔法の言葉」ですので、参考までに未来会計担当者の方にはお勧めしたいです。
コロナ禍で売上が0になった温泉旅館の実例
Q.未来会計業務を20年取り組まれてきた中で、印象に残るお客様はいらっしゃいますか?
温泉旅館での未来会計の取り組みが印象に残っています。そのお客様はリーマンショックの際に銀行主導で事業再生をした温泉旅館で私は当時、税務監査を担当させていただいていました。事業再生が一段落したころに社長から連絡をいただき「再生フェーズから成長フェーズに向かいたいので手伝ってほしい」と言われ未来会計がスタートしました。
2019年に未来会計がスタートし、最初は順調にいっていたのですが、翌年コロナウイルスがまん延、そして緊急事態宣言発令に伴い温泉街から人がいなくなりました。こうなってくると打つ手がありません。お客様がいないどころか、集客をすれば叩かれるという時期が続きました。長く会計事務所に勤め、多くの会社の数字をみてきましたが、事業をしている会社の1カ月の数字を集計して、売上高0円というのはこの時が初めての経験でした。収入がないので経費を削るしかありません。取引業者に連絡を入れ、解約や減額をお願いすることになりました。この時私は「未来会計契約が一旦終了しても仕方がない。むしろこちらから終了を提案すべきか」と考えていました。するとそんな私の考えを見透かしていたのかのように、不意に社長から「君は私達と一対の存在だ。」と言われました。「やるしかない!!!」強く思ったことを今でも憶えています。
Q.こちらのお客様へのご支援は、どのように進められたのですか?
「社員の雇用と会社を守る」という社長の方針の下、社長と銀行に行き融資交渉、経理担当者と日々の資金繰りの管理、各部門の部門長と、マーケティング、原価管理、固定削減のミーティング、外部の提携会社と助成金の段取り等、やれることはとにかく会社と一緒になって取り組みました。社長からは「社員の不安を軽くしてやってほしい」と言われ、社員さん、パートさん全員とミーティングをおこない現状の説明、今後の方向性等出来る限り伝わりやすい言葉を選んでお話ししました。
その結果どうなったかというと、かなり苦しい状況でしたが何とか一人の退職者もださずにコロナ禍を乗り切ることが出来ました。しかし休む間もなく今度は能登半島地震が発生し旅館は被災しました。露天風呂、配湯設備、客室、駐車場等、多くの被害が出ました。まだまだ苦しい状況が続きますが会社の皆さんと一緒に必ずやこの危機を乗り越えます。
Q.未来会計は、数字の面でも成果につながるとお感じですか?
未来会計を実践されるお客様は、経営が良くなるパターンが非常に多いです。よい結果が目に見えて現れると、取り組みがさらに楽しくなります。結果が数字になって表れると「もっとやろう」という感じで行動がより加速します。するともっとよい結果が生まれるという、よいスパイラルが回っていきます。こういった「勝ちパターン」を体得される社長も少なくありません。
Q.未来会計プランナーとして今後の目標をお聞かせください。
より多くの企業に未来会計を広めていきます。中小企業の多くは経営計画を作っていない会社や未来会計の価値が伝わっていないことが多いように思います。経営計画をつくるだけでは利益は出ませんが、経営計画を軸として経営をしていく「未来会計」に取り組むことで会社はよくなります。一社でも多くの企業に未来会計を実施し、価値を体感していただきたいです。私個人としては、お客様のパートナーとして、これまで以上にお客様の利益により貢献できるよう、もっと力を付けていきます。
未来会計への取り組みを検討する全国の会計事務所へ
Q.未来会計への取り組みを迷われている会計事務所が全国には沢山います。そんな事務所へメッセージをお願いいたします。
当たり前のことですが、「これをすれば必ず会社がよくなる」というマニュアルのようなものは存在しません。本屋さんやインターネットには色々なノウハウや成功体験があふれていますが、その通りにやって利益が出るのであればだれも苦労はしません。お客様の状況に応じて、その時々で最適解を模索していくのが未来会計です。自分たちがどのようなアプローチをするのかで結果が変わっていくことがこの仕事の醍醐味です。一見大変な仕事のように思われるかもしれませんが、その分やりがいのある仕事だと思います。
未来会計を始めようかどうか迷われている方には、「迷わずやってください」と私はお伝えしたいです。どこから始めるべきか迷われたら、まず社長の話を聞くことに尽きるのではないでしょうか。先ほどお話しした通り、多くの社長には夢を語ったり、不安を相談したり、愚痴をこぼしたりできる経営パートナーがいません。社長のパートナーとして話を聞くだけで社長は喜んでくれますし、それだけでも十分に価値のあることだと思います。
社長の話を聞いて、それを経営計画書という形にすることによって社長の思考が変わり行動が変わることがあります。社長の行動が変わればその行動を見ている現場の社員さんの行動が変わります。社員さんの行動が変われば会社は必ず良くなります。
未来会計に携わる方が増え、様々な方々と一緒に情報を共有しながら共に成長していきたいと思っています。
